花守の竜の叙情詩(リリカ)
買ったけども読んでなかった数百冊のうちの1冊。
「叙情詩」の本来の読みは「じょじょうし」だが、本作では「リリカ」としている。叙情詩の意味は「個人の純粋な思想、感動などを表現した詩」。
闇から光、絶望から希望、裏切りから信頼へとゆっくり移ろい姿形を変え、且つ奥行きのある本格的ファンタジーだったのでここで取り上げることにした。
両国の争いの果てに出会うことになった元王女のエパティークと、未来はないが自国に置いてきた妹を守るべく国を出ることにした第二王子のテオバルト。支配された側の王女と支配した側の王子は、ある命令の下、姿をくらませつつ長旅をすることになったのだが。
2人はろくに口も聞かず、村民から隠れるようにして旅をしていくが、当然上手いようにはいかず。第二王子は危険な存在として第一王子から命を狙われ、そして王国を裏切ったと見なされた元王女にも危険が及ぶ。心身ボロボロになった先にあるのは、これまで何も知らなかった自国の実態、それまで当たり前と思っていた常識が幻想だと知ったことによる戸惑い。
そして、互いを知ろうと手を取り合おうとする勇気、そこから少しずつ芽生える信頼と、愛情。
王道だが、変に構えず堂々と道をゆくその姿勢たるや、清々しいとすら感じる。
でも本作はそれだけでなく、ファンタジーにはありがちな竜が思いも寄らない形で出てきたり、何とも愛らしいあの娘が実は◯◯だったりと、読み手をあの手この手で裏切ってくる。こちらは良い意味での"裏切り”だった。
そんなにファンタジーを好んで読んだりはしていないが、時たまにこういうガツンと来るファンタジーに出会えると、もっといろいろ探して読みたくなる。
まあ敢えて探さないけど。まだ数百冊の山の中に絶対にあるはずなので……。
なお、1巻でも十分満足いく内容だったが、シリーズとしては3巻まで続く。次巻以降、この1巻を超えられる物語なのかは非常に興味がある。
花守の竜の叙情詩
(著)淡路 帆希
(絵)フルーツパンチ
KADOKAWA(富士見書房)
2009年6月発行
[記録日:2025/12/07 | 更新日:2025/12/13]